床屋で担当者の愚痴や人生相談を聞かされる!?

これは僕が大学生の頃、つまり今から10年ほど前の話です。当時、僕は東京にある大学に通っていました。その床屋は大学の通学途中にあったのですが、なんでもカットコンクールで何度も優勝するという経歴のある、人気のある床屋でした。

ですから、スタッフの数もそれなりに多いお店だったのです。その床屋には僕の友達も何人か通っていました。そして友達の間でもなかなか評判は良かったのです。ですから僕もその床屋には何度か通いました。

そのお店に行ってから2回目以降、僕はいつも同じ人に担当してもらうようになりました。別に僕の方からその人を指名した訳ではないのですが、いつも同じ担当者になりました。その方、少し変わっているんです。何が変かと言うとカットをしている時、ずっと僕に人生の愚痴を言い続けるのです。

自分は理容師になったけれど、本当はこんな人生は歩みたくなかったとか、いくら経験を積んでもカットが上手にならないとまで言います。僕にしてみたらお金を払っているのですから自分でカットが下手なんてカミングアウトをする人にとてもじゃないですけれどカットなんてして欲しくはありません。

その人のカットはやっぱり下手くそです。僕は後頭部は刈り上げをするのですが、その人にカットをしてもらうと後頭部の刈り上げは必ずガタガタの状態になります。挙げ句の果てには彼は自分より明らかに年下の僕にどうしたら人生、うまく行くのだろうと相談をしてきます。

そんな事、当時大学生だった僕に、しかも年上の人に答える事なんて出来る訳がありません。僕はお金を払って床屋に来ているのに、僕に人生相談をするのなら逆にお金を払って欲しいくらいです。

普通、床屋は髪をカットしてヒゲを剃ってもらうとすごくサッパリして、そして気分的にも爽快になってお店を出るものです。けれどもあの担当者のいる床屋はお店を出ると本当に僕自身が暗い気持ちになりました。何で僕がこんな気分にならないといけないのだろう?と僕は本当に疑問に思いました。そんな事が続きましたので、その床屋には二度と行く事はなかったのです。

そんな事があり、僕は床屋を変えました。変えた床屋はご主人が昔から営業をしていて地元の人に愛され続けているお店です。行ってみたら床屋の名店ですよね。ご主人は決して口数は多くありません。こちらが何かを話すとそれに軽く笑顔で答える程度。けれども技術はさすがに地元の人に愛され続けているだけあってとても確かです。

僕が頼んだ通りにカットをしてくれるのでいつも僕は満足出来ます。その床屋さんは職人肌のお店なんですね。これぞ僕が床屋に求めている姿です。そんな確かな技術にささえられ、控えめであるけれど決してぶっきらぼうではないご主人の人柄に僕は惚れて今でもその床屋に通い続けています。